えらいものを見てしまった。
先日、代官山の「晴れたら空に豆まいて」というライブハウス(この箱がふるっていて、桟敷というか枡席というか、決してバルコニーではないが、そういう小上がりがあったりする「和風」の箱なんである)で
『越路姉妹』
という変態バンドの演奏を見てきたのである。
友人のギタリストの福田真一郎大兄が、大兄曰く「非常勤」で参加しているバンドなのだが、その福田大兄が誘ってくれたのでDW(ドーベルマンワイフ)と俺が毛深くなる前(つまり相当昔)からのマブダチM宅氏とひょいっと足を運んだのであった。
で、このバンドは
ボーカルそしてギター(福田大兄)の2人が金髪にラメラメのワンピース姿でうなりまくるもので、姉妹とはいうものの、マナカナ、トラップファミリーやノーランズみたいな血縁関係は一切ないらしい。それにしてもデコルテ、否、僧帽筋や肩甲骨のマッスル感そしてヒゲなど、男子のアイデンティティをしっかりと残した上での女装は、正当派のオカマというか、なんというか「焼け跡派」というアトモスフィアが漂い、どこか見てはいけないものを見ている快感をおぼえる。けだし、俺は幼い頃別府で泊まった宿の卓球ルームに宿泊客が忘れて行った週刊宝石のとても卑猥なページをこっそり見たことを思い出した。
とまれ、一度演奏がはじまるとこれは、「数々の有名アーティスト達をサポートする腕利きセッションミュージシャン達」みたいな形容は明らかに陳腐きわまりない、要するに、あの演奏を耳にして「うまい!」とか「ぎゃっ!」とか思わないのはバカだけである。ド迫力のボーカルに酔い、福田大兄は完全に男と化して、気持ちいいギターを奏でるというわけで、小上がりで越路姉妹の変態プレーを凝視する俺は気がつくと正座していた。どんな音楽と尋ねる人もあるだろうが、なんというか「ガード下のバーでモロ出しされた燃えたぎる情念、ああこれが女道」みたいな世界で、劇薬否、何もかもぶっ飛ぶ特効薬みたいな音楽なのである。
演奏後「なんちゅうすげえベースやねん」と「ドラムかっこええわあ」などとM宅、DW、俺の3人は小上がりでヒソヒソと慣れない関西弁を使ってしまうほどに酔いしれて語りあっていたら、流れは飲みにうつり、福田大兄、そして福田大兄の親友の岡山の賢人O氏、とテーブルを囲む人がふえていき、ついにはドラマーの牟田昌弘さん、そしてベーシストの岡雄三氏とヘロヘロになりながら語りあうという機会にめぐまれてしまった(同時に床を見ると越路陽子氏が天使のような寝顔で熟睡していた)。そんな中、円卓を囲み、ドリトスで腹一杯の俺はニーチェがどうのとかほざいていたが、そのくらい調子にのるくらい越路の音楽はいい、最高なのである。