dancyu12月号はポテトサラダ特集である。この特集の中で、基本ジャガイモとマヨネーズの組み合わせで最高のレシピ探しをする実験記事を書かせていただいた。茹でたり、蒸したり、マヨネーズの比率を変えたりして、都合64皿を試食して辿り着いた結果は……。

 実験の日、料理研究家の山中裕美先生が用意してくださった64種類のポテトサラダがテーブルの上に並べられたが、なにしろ、64皿同時卓上大行進である。白い皿に白いかたまり。まさに「黒が完敗したオセロ」である。


 そして部屋中に充満するポテサラ・フレグランス


 ポテサラ探求家と自称しているくらいなので、オー・デ・ポテサラがあったら使うのもやぶさかでないぼくだが、立っても座ってもポテサラのにおいが漂う世界というのは、ある種別の星の大気のようで少しだけくらくらする。そんなポテサラ星でのポテサラ大実験は、一口ずつ口にしては水を飲み、分析をかさねるという地道な作業のつみかさね。しかもポテサラとビールは水戸黄門と杖くらい切っても切れないリエゾンと思っているぼくにとって、味を見極めるために、一切のアルコールを口にしないまま64皿もの魅惑的なポテサラを試食するという、おそろしい我慢の世界……。美人しかいない島に流されたのに大人しくしなくてはいけない、みたいなものだ。冷静さを失いそうになったが、探求家がそんなことでくじけるわけにはいかない。編集者のSさんも傍らでナイアガラの滝みたいに汗を流していたが、あの汗もおそらくは酒を我慢している汗なのだ、と勝手に解釈し

「我慢しているのはボクだけじゃない!」

と鼓舞。そしてひたすらに究極を目指したのであった。

 

 結論にたどりついた時、王者の皿に指す旗印の「王冠」と「ティアラ」を描く栄誉まで授かり、かくして、実験は無事終了。



 で、で、で…発売と同時にこの頁も話題になっているらしく本当に嬉しいかぎり。ほんとうにありがとうございます。これからも、ポテサラみたいな顔してポテサラとともに生きていく所存です!!(記事中の写真ではすさまじい表情をお見せしてしまってすみません〜)