ipadが売り出された今日、明日のSense of Wonderで活動するアリジャンプ・プロジェクト用の腕章とネームタグという極めてプリミティブな道具を買いに出かけたついでにお茶をした。日中のカフェ(アメリカ出身系のお店達)には御婦人方が大勢いる。グループがほとんどで一人で一休みという人は少しいるが、まあ、とにかく女性の方がたくさんいるわけだ。

ipadが出た日というので、はたして一体こういう昼日中の喫茶店でどのくらいの人が本を読んでいるのか逆に気になって周りを見回すと、目についたのはたった1人。大概がグループの客なので、それも当然なのだろうが、そうすると一体何を読んでいるのか気になる。

ちょうど目の前にいるその短髪黒ポロシャツの女性は、一心不乱に一冊の本を、それこそ食い入るように読んでいて、俺がその様子を観察しても全く気づかない様子なので、時々うかがっていたら、手元のアイスコーヒーを飲むことも忘れて、読書に没頭しているらしい。この広いカフェでただ一人携帯をいじらず紙でできた本を読む女性。瞬きするのももったいないという風に熟読するさまは、まあ一応ものを書くことを生業としている身にはお辞儀の一つもして礼がしたいほどだが、

はたして一体何をそんなに真剣に読んでいるのか?

そんなとき一瞬表紙が見えて

「デ」

というカタカナが見えたので、これは翻訳か、そこそこ厚みのある本だし、SFファンかしらなどと想像していたのだが、一瞬彼女の姿勢が崩れ表紙がちらりと見えた時、何か顔写真のようなものが見えた。それも切り抜きで。

コーヒーに手をつけていないことに気づいたのか彼女は片手でアイスコーヒーのカップをつかむと一気に3分の2ほどを飲み干し再び本を開いたそのとき俺の目には

『デヴィの「ちょっと一言よろしいかしら?」』

とあった。

夢中になっている彼女に、俺は一言言いたかたったがやめた。
言うもんか。