つい先日、取材で山梨方面へ出かけた。スーパーあずさというのに乗って出かけたのだが、この電車は先頭にくっついたマークが電光掲示板で、ただ「スーパーあずさ」という文字が発光するだけで、大昔に行った後楽園球場の電光掲示板の「島田誠」とか「田村」(ともに当然日ハム)なんて文字を彷彿させて一瞬のノスタルジーは味わえるものの、なんというか色気のない電車である。

この特急電車は取材の最終目的地である小淵沢を通過してしまうので、甲府で下車して各駅停車に乗り換えた。

県庁所在地なので、もっとにぎやかかと思ったら、そうではなかった。なにしろ人がいない。車窓からオツオリの後輩とか走ってないかなと思ったが、見当たらなかった。

甲府を出て5駅ほど停車して小淵沢に至るのだが、その間ホームにいたのは最大10人最低0人であった。中田英寿の出身校の韮崎高校のある韮崎も通過したが、ここも、ほぼすっからかんのホームだった。

さて小淵沢といえば以前ウイスキーの蒸留所を見学したのが10年も前の話で、訪れるのはそれ以来。編集者やフォトグラファーとは別ルートで来たので、1時間ほど早く到着してしまった。それで、出張の際のルーチンワークである「文房具、書店、時計店」めぐりをすることにした。こういうところには、とんでもない品物が普通に「不良在庫」として埃まみれ陳列されていることがたまにある。さっそく、駅前商店街に出向いてみると、人が本当に一人もいない。尋ねようにも人がいないのだ。

それでも探しまわって「ゼブラ」という看板を見つけたので、まずは文具店を発見と思ったら、なんと店の半分は書店で、地味に一石二鳥を達成したのであった。さて、さっそく面白在庫探しに着手したところ、あるではないか。今ではアイルランド製しかないはずのペンのアメリカ製が。しかも2本セットが大量に。大量なのはかぶった埃も同様だったが、そんなことは気にせず、レジへ1セット持って行くと、

「古いから◯○○○円でいいよ」と。ありがたや。

こういうものを見つけて、買い占めてオークションなんかに出品する人も大勢いるのだろうが、俺はしない。デッドストックなんてものは天然資源みたいなものなんだから、欲しいぶんだけ買うのがいい。この後、この店にきた変わり者がまた有り難がって買えるようにしておくのが礼儀。これだって貴重な観光資源なのだ。

さて、それから時計店を探したがあいにく定休日であった。やむなく駅へ戻ったが、それにしても、人がいない。東京から近くてこれだけ風光明媚なんだからいくらでもツーリストを呼び込めるはずなのに…

そんなことを思いながら駅の土産店兼弁当屋兼喫茶店兼キオスクに入ってみてあることに気づく。山梨県の小淵沢でありながら置かれている土産物の半数近くが長野の物なのであった。立てられたのぼりには「ようこそ小淵沢へ そして信州へ」みたいなこと書かれているが、いくらなんでも欲がなさすぎる。それに、そんなに信州頼みでいいのか山梨。とにかく応援したくて、土産物を買ってやろうと思うのだが、いちいち箱に貼られたシールを確認して「製造者 長野県下諏訪市」とか書かれていないのを探すのに一苦労。がんばれ山梨。中田ヒデも東ハトもいいけど韮崎も何とかしたほうがいい。でも、今のままじゃ、ヒデのキラーパスもそのまま信州にスルーしそうで心配だ。