「いいから早くバリケードの中に入って!」

夢かと思ったら、隣の子供が遊んでいる声であった。一体何を封鎖しようとしているのか?

隣には小学校低学年くらいの姉と幼稚園くらいの妹の二人のこどもがいるが、最近暖かいせいかベランダを開放して遊ぶので、よく声が聴こえる。つい先日まではリコーダーの「ポポーポー」が流行の中心であったが、早くも廃れてきたらしい。時はうつろいやすい。

現在は「活動系」が好みらしく、今朝は「バリケード」とか「説得」とか「突破」とか、聞き捨て鳴らない不穏な単語を連発している。

発言の主は、おもに姉のほうらしく、妹のほうの声はほとんど聴こえない。面白いので、耳を峙てていたら、

「怒らないから、言いたいことは言って。それで納得すれば、こっち来て」

と、ベテラン幹部がオルグするみたいなことを言っている。子供のくせに手練である。

一体、この子らに、こんなにハードコアな発言をさせてしまう5月10日はどんな日かと調べてみたら、ボノと金正男とシド・ヴィシャスと永井一郎、橋田壽賀子らの誕生日であった。平壌でライブエイドをやったらピストルズが乱入するという筋書きで、演出は橋田壽賀子。映像のナレーションは波平なんてイベントは、一瞬たりとも目が離せない。まあ、こういう日だから、小学生が自宅をバリ封するなんてこともおこるのも自然の道理。…でもないか。

ちなみに、この日はシュトレーゼマンとノッポさん、さらには、『傷だらけの天使』の鈴木英夫まで、同じ誕生日なのである。極端も彼岸を過ぎてしまいそうな顔ぶれである。

まあ、かように朝っぱらから、すごくレボリューショナリーな日曜だったんだが、はて、5月といったら五月革命。安直な連想だが、今朝は、チビのバリ封シュプレヒコールによってそういう気分になり、勢いで一体何日がその日なのかと思って検索したら、なんとおれの誕生日と一緒であった。

感嘆しきり。使命感がもりもりとわきおこる、おれであった。
とまれ、こんなにカレンダーをいじくり、暦にこだわっても締め切りはかわらぬ…。すでにデッドラインを過ぎて、ひたすら平身低頭。すまんHクン。