ポーランド大使館で開かれたトマス・スタンコ(トランペット)のライブに行ってきた。
 プロモーションのためのライブということで、来ている人は関係者がほとんどのようだ。
 会場は背広、背広、背広。
 まずは長めのMCをプロモーター氏が一席。氏が袖へ引き込むと、主役のスタンコとピアノのスキンヘッド2名、坊主頭のパーカッション1名にベースがスポーツ刈り(?)、という短髪カルテットがぺこりと一礼。おもむろに演奏を始める。
 
 ジャズだ。すごく。
 でも、なんだか違和感。
 彼らの髪型のせいではない。

 ほぼ最後列(といっても20列目くらい)だったから会場が見渡せる。全員着席。頭が揺れるような様子もないのだ。やっぱり私財を投じてチケットを買って来た観客が集まるライブとは違うのかもしれないね。
 
 でもそれだけじゃないな。この違和感は。

 音楽が大変ジャズなのだ。つまりジャズだねえ、っていう感じの。
 つまり、僕には、すごく印象深いと言うことはなく、心地よく流れていく感じ。見回すと、ライブも中盤にさしかかったころには船をこぐシルエットがそこかしこに見られた。オーディエンスが乗らないからか、演奏に引き込まれないからか、あージャズ、という時間が過ぎていった。
 
 ライブが終わって、自身もミュージシャンで、同業のかっこいい先輩がかつて
「ジャズはいつのまにかただのBGMになっちまった」と嘆いていたのを思い出す。

 ただ、ぼくはBGMがあると集中できないのだが、今日は、BGMが集中力を高めてくれたのか、今書いているものの構想がとてもはっきり練られてしまった。
 音楽に何かを求めたり、音楽が何かを変えるなんてぼくは思わない。
 けれど、効用ってのはあるのかな、なんてことを思った。でも、たとえば温泉ってそのときは気持ちいいけど、また、同じお湯につかりに来ることってよほどの温泉好きしかやらないと思う。今日のライブは、ちょっとそうした温泉につかったような気持ち。
 湯あたりは、もちろんしなかったけれど。