高知高校は、学生の不祥事で出場辞退した明徳義塾高校の代わりに夏の甲子園に出場した。結果、初戦敗退。これでよかったよ、ほんとに。
 昔みたいしいひさいちの漫画「おじゃまんが山田くん」で、超弱小チームの東江戸川高校野球部が、デッドボールだけで勝ち進み甲子園に出場してしまうエピソードがあった。地方大会の決勝で負けたのに、相手が辞退したから、代わりに出場。それこそ、相手が勝手に投げたデッドボールで甲子園に出場してしまうようなものだ。同じ理由で21世紀枠というので出場したチームが勝ちあがっても困る。あれは、甲子園の一芸入試のようなもので、個性を重んじて出場させるものだ。大学の一芸入試は、受験生の個性を評価するものだけれど、甲子園は、野球が強いというのが一番の価値なんだから、ほかの一芸ができたところで甲子園に出てもらっても、とんちんかんもいいところだ。そんなことを言ったら、清風高校は体操が強いから出場、桐朋は音楽ができるから出場とか、そういうこともできちゃうでしょ(2校に恨みなどは全然ありません、もののたとえよ)。
 そういう高校がもしも勝ち進んでしまったら、甲子園って何、っていうことになるでしょ。選抜はともかく、夏の甲子園はトーナメント。何より勝ち進んでこそ意味がある。柔道の敗者復活だって、相手が勝ち進んでいることが条件だし、勝ったところで3位どまり。だから、いきなり準優勝してるから出場ということ自体ムリがある。だって負けてんだから。
 とまれ不条理な出場は不祥事がなくならない限りつづく。
 そこで、度重なる不祥事辞退に備えて、高校野球は何か新しいシステムを導入したらいいんじゃなかろうか。私が考える3つの高校野球不祥事防止システム、それは1)高校野球Gメンの結成、2)出身中学(出身の都道府県)の積極的公開、3)監督のユニフォーム禁止の3点である。
 まずは高校野球Gメン。これは、早い話が高校野球隠密同心である。問題のありそうな高校にこっそりしのびこませた新任教師。実は彼は、高校野球を愛する第三者機関、高校野球オンブズマンから派遣されたGメンなのである。不正があってはいけないので無報酬のボランティア。基本的にはサンダーバードのように金持ちの道楽というのが望ましい。そして何より野球好きの人物がこっそり高校に潜入する。影に日向に野球部の動向をチェック。部員に喫煙者がいれば、即刻その事実を耳元でささやいて退部を促す。暴力監督がいれば、ビデオに録画して本人の自宅へ送付。監督は速やかに辞職。そして部員同士の暴力も、こっそり撮影した写真を見せて、自主退学へと導く。こうすれば、高校野球界には暴力も非行も一切なくなるのだ。あえてこの作戦の問題をあげるなら、教員免許を持ち、遊んで暮らせる人間を集めること。そしてGメンの方法論が限りなく強請に近いことだけである。
 次に、2)出身中学の積極的公開。これは野球留学をしてることをつまびらかにするためである。たとえば、北海道勢が勝ち進むと、「どさんこ」がどうのこうの、熊本が勝てば「もっこす」がどうのこうのと、ことさら郷土出身選手の活躍をあおる。しかし、最近勝ち上がるチームは大概主力はよそからやってきた選手たちである。彼らには地元出身という気持ちはないし、もし問題を起こして放校になっても、「もうここじゃ暮らせない。困ったな。あ、大丈夫、実家に帰ろう」ですむ。したがって、気持ちもゆるい可能性は高い。しかし、それは野球留学生本人のせいではなく、飲ませ食わせで越境入学をさせ自校のPRをはかる高校がいけないのである。こうした高校は高校野球を利用してますよ、という事実を示すために、中継の際、選手の出身県をきちんと明らかにするのだ。打席に立つたびに、打率や学年と一緒にきちんと「○○県出身」と示すのだ。そして、選手も地元に帰ればバレない、という心理が働くこともなくなり、心にブレーキがかかるというダブルの効果があるのだ。余談だが、野球留学というと、「あそこは東北の高校なのに、ベンチは大阪弁がとびかっている」とか、「北陸の高校はほとんど大阪出身者」とか、野球留学者というとやたらに大阪出身者をやり玉にあげる声をよく聞く。この率で計算するとプロ野球選手は100パーセント大阪出身者になってしまう。なぜだろうか?
 そして3)の監督のユニフォーム着用の禁止。実はこれが一番手っ取り早い不祥事防止策である。高校野球は、監督は試合中グランドに出られない。ゲームは選手が自主的に行うということらしい。が、実際には監督の指示を伝令役の選手が、いちいちテケテ、マウンドに駆け寄ってひそひそと伝えるのだ。
 何だあれは?権力者は表には出てこないという世の理を見せつけ、選手に社会勉強させているつもりか?
 にもかかわらずひとたび不祥事が起こると、やれ全体責任だ、連帯責任だと、一蓮托生ムードになる。
 これは一重に監督がユニフォームなんか着ているからいけないのだ。選手の問題は選手の問題。教師、監督の問題は彼らの問題で別というふうにするには、まずは監督がユニフォームを脱げばいいのだ。だいたい、野球ぐらいだよ、監督がユニフォーム着ているのなんて。ユニフォームっていうのは敵か味方かを見分けるのに着るんでしょ。試合に出ない監督がユニフォーム着てどうすんのよ?野球なんて両軍入り乱れてなんて場面ないでしょ…あ、あった。乱闘だわ。そんな場面でしか役に立たない監督のユニフォームは絶対禁止ですよ。百害あって一理なし。
 このように不祥事防止システムを導入すれば高校野球は一切解決する…なんてことを高野連なんて本気で話してそうで怖いよなあ。