今日はビロウな話しです。
先日、友人で編集者のS君と打ち合わせというか要するに雑談と酒という状況だったのだが、突然こんなことを言い出した。
「うがい手洗いって、あれ効くよ!」
新しい健康法を見つけた「eureka!」という口調だったが、うがいと手洗いは子ども頃から家に帰ったら必ずしてきたので、なんだって「やっぱゴム巻ダイエットだよね」ぐらいの新機軸を紹介するような雰囲気で発言したのか問いただすと、
「オレ、全然したことなかったもん」
と回答された。
「覿面でさ、今年は風邪ひかないもん」
と実証する。
彼は以前つとめていた会社で同期なのだが、オレの同期は、皆、「無類の学校好き」でちょっと学校に長居してしまったタイプなどが多く、彼もまたオレよりも一つ年下なので、要するに、齢38にしてようやく「うがい&手洗い」の実践ならびに習慣化を果たしたのである。
しかし、世の中ではかなり浸透している、畢竟「常識」とされているものながら、実は意外に実態を把握しきれていないことがあるのではないか?
俺はあった。
和式のトイレの使い方が18歳までわからなかった。家のトイレが洋式だった。しかも小学校ぐらいまでは、学校で「大」をすると沽券にかかわるという男子生徒社会の不文律があったのでトライすらせず。たまにどうしようもなくなったときは、どのクラスからも遠いトイレにのたのたと入り、用を足していたのだが、その際、使い方がわからない。
で、オレは、いつものとおりの形で事を済ませていたのである。つまり
「空気椅子」
の格好であった。トレーニングの一種としても実践されている空気椅子は下半身への負担が大きい。体を支えるだけで精一杯なのに、そのうえ、下腹部にさらに力をいれなくてはいけない。こうなると、もはや完全な修行である。しかもオレは奇麗好きだし基本的には常識人なのでトイレは汚してはいけないとしつけられてきた。だから、なるべく勢いを殺して、なおかつよろけることなく、中途半端な高さから事を済ますという、ほとんどシルクドソレイユみたいな状況をあの個室の中で繰り広げていたのである。やっぱり日本人は凄い、と俺は何の疑いもなくその方法を高校三年生まで実行していたが、ある日「きんかくし」という和式便器の部位の名前の由来をぼんやり考察していたとき、
「あ!」
と気づいたのであった。空気椅子では「きんかくし」は機能しない。しゃがむ。eureka.
以来、俺は和式便所が大好きだ。