最近私のアホ面が度をこしている。特に家を出た時、それは激しい。
話しは一月ほど前に、拙宅の前にある店が開業したことにさかのぼる。
実はうちの前に焼き鳥屋がオープンしてしまった。
そこはこれまでに何軒かのラーメン店がつぶれた曰く付きの場所で、行ってみれば「飲食店逆パワースポット」だと思っていた。ところが、今度開いた焼き鳥屋は随分繁盛している。
店の外に炭火の焼き場があって、そこでテイクアウェイもできる。
当然香りが漂う。よいにおいだ。
私の飲兵衛シナプスはきわめて太く、こういう刺激には大変敏感である。
ちょっとでも焼鳥の香りが漂えばすぐに体が反応する。
思春期の中学生が棚指しになっているエロ小説のタイトルを目にしただけで悶絶するように、焼鳥のにおいをかげば、私の体はお酒をもとめだす。ポパイにほうれん草、私のお酒。
というわけで、家の前に焼き鳥屋があるということは、一歩表へ出たらいきなり焼鳥の香りが鼻にすすっと流れ込み、私の体はやにわに酒をもとめだすことになる。
ああ、随喜の涙……でもない。むしろ困惑。
なにしろ美人だって近づき過ぎれば毛穴しか見えない。
「玄関開けたら二分でご飯」ならいい。「玄関開けたらご飯」では手を洗う暇もないではないか。
しかも、原稿のあいまに、「気分転換にアイス最中でも買ってくるかなあ」などと暢気に家を出た途端に焼鳥の香りなんてくらってしまった日には……。砂漠を放浪中にオアシスを見つけておまけに美人だらけで、その美人達が揃って私に惚れている、というぐらい抗いがたい誘惑である。
というわけで、最近家を出る時は口で息することにしている。お口あんぐり顔土気色である。ゆえに、今まで以上にアホ面を近隣でさらしているのだ。